メロス楽譜 M1006 第5刷
三崎のうた
作曲者のことば
多田 武彦
1957年に東京に移り棲み、1971年以降は神奈川県藤沢市に住んでいるが、相模
湾に臨海工業地帯を造らなかった関係者には頭が下がる。
1993年、病を得て七カ月の自宅療養を余儀なくされたが、湘南の陽光と海景の
コントラストの見事さに心が和んだ。
 湘南に住むまでは、年に一度鎌倉や江ノ島に来る程度だったが、、時折足を延
ばして訪れる三浦半島の風物やそこに住む人々の人情は印象的であった。
1969年、明治大学グリークラブから新曲の委嘱があった。永年明大グリーを指
導されている外山浩爾先生のご尊父は、声楽家外山国彦先生(故人)。ご高承の
とおり、外山国彦先生は「北原白秋作詩・山田耕筰作曲」による多くの歌曲を初
演し、日本中に広められたかたである。
 ご子息の浩爾先生指揮による初演には、白秋の詩群をもって応えようと思い、
三浦半島の景観と人情を描いた詩集「畑の祭」や創作民謡集「日本の笛」から詩
を選び、この組曲を完成した。なお、当初は四曲で構成されていたが、後年「海
雀」を加えて五曲構成とした。
 終わりに、この組曲の出版にご尽力くださったメロス楽譜西野一雄氏に、厚く
御礼を申し上げる。
1998年4月