メロス楽譜 M1022 第1刷
遠いふるさと
作曲者のことば
多田武彦
 崇徳高等学校グリークラブの育ての親とも言うべき天野守信先生(故人)は
私の二番目の弟が属していた同志社大学グリークラブの後輩であった関係で、
私も先生から永年の間、ご交誼をいただいた。先生や崇徳高等学校グリークラ
ブのかたがたは、私の作品をよく演奏して下さったし、男声合唱組曲『海に寄
せる歌』などの委嘱作品を作曲する機会を与えていただいた。
 私が初めて詩人山村暮鳥先生の詩に作曲したのは1983年の男声合唱組曲『山村
暮鳥の詩から』であるが、男声合唱組曲『遠いふるさと』は、崇徳高等学校グ
リークラブからの委嘱作品として、1999年に作曲した。
 自然の着飾らない風物や、人間の純粋な心情などを、ありのまま表現された
山村暮鳥先生の詩情を慕って、愛読するかたがたは非常に多い。
 今回の作曲に際しても山田耕筰先生や清水脩先生からのご教示を守り、特に
終曲の「風景」では、単に言葉遊びに曲付けすることなく、「詩の奥底にある
詩人の魂や、詩の構築性と西洋音楽の構築性との、融合性と対峠性」を実現す
ることに努めた。
 終わりに、この組曲の出版にご尽力くださったメロス楽譜西野一雄氏に、厚
く御礼を申し上げる。
2006年3月