メロス楽譜 M1055 第1刷
大木惇夫の詩から 四季點綴
作曲者のことば
多田 武彦
 小田原男声合唱団は、近年外山浩爾先生のご指導下、着実に発展を遂げている。
2001年には創立30周年を記念して新作の委嘱があり、大木惇夫先生の詩による組曲
『西湘の風雅』を作曲。JAMCA演奏会in石川での演奏は見事だった。
 創立35周年にも新作の委嘱があり、北原白秋の詩による組曲『冱寒小景』を作
曲。これもJAMCA大分演奏会で名初演をおこなった。
 昨年も、今年のJAMCA滋賀演奏会に照準を合わせたかのように新作委嘱があっ
た。「詩は小田原に所縁のある方の作品で・…‥」といつもの指示。
 私としては前二作に劣るものは書けない。かなり緊張しつつ再び大木惇夫先生の
詩集から数篇を選び、大木先生の豊かな詩情に助けられ、一応満足できる構成と曲
想を持った組曲を完成した。
 「5年ぶりに弟に会う前の詩人の心情」を綴られた第1曲目の「野茨の道」。
 「訪日のイタリア人らしい女性との対話形式」で表現された第3曲目の「南」。
 「江戸時代の二度の震災→明治経新の廃藩置県後の廃城→関東大震災時の残余建
造物の全壊等のあとの、名城の惨状に心を傷めつつ、轟く濤声と絶え続く松籟の中
での往時への追想」を描かれた第6曲目の「旅愁小田原城」。
 大木先生の詩の中では珍しく喜怒哀楽の鮮明な詩群を中心に作曲することができ
た。
 終わりに、この組曲の出版にご尽力くださったメロス楽譜西野一雄氏に、厚く御
礼を申し上げる。
2008年9月