メロス楽譜 M2024 第1刷
玄冬素雪
作曲者のことば
多田 武彦
 近年その演奏能力と名声とを喧伝されているOSAKAMEN'S CHORUSから
創立50周年記念演奏会の新曲の委嘱があった。
 常任指揮者の一人、安井直人先生(大阪府立淀川工科高校教諭・国語科
担当)が、大の北原白秋フアンであることから、前回の組曲『東京景物
詩・第二』に続いて白秋先生の詩に作曲することとした。
 ところで1951年、私がまだ京都大学の学生の頃、作曲家・故清水脩
先生から頂いた数々のご薫陶の中に「日本歌曲や合唱曲をするなら、北原
白秋作詩・山田耕筰作曲の歌曲を徹底分析すること」とのご指示があっ
た。また、ただ一度だけご教導をいただいた山田耕筰先生からは「日本歌
曲や合唱曲を作曲するなら、花鳥風月・春夏秋冬・喜怒哀楽・起承転結が
巧みに組み込まれ表現されている詩を選ぶこと」という厳しいご教示を頂
いた。
 そんなことから今日まで私は、北原白秋先生の詩による男声合唱組曲を
15篇作曲してきたが、今回はかねてより私の構想の中にあった「北原白
秋先生の雪の詩を水墨画のような男声合唱曲に仕立ててみたい」との思い
に沿って作曲を始めた。
 完成後、組曲の標題がなかなか思い浮かばなかったので、安井先生にご
相談したところ、さすがに国文学に精通され、且つ白秋文学に造詣の深い
先生から「玄冬素雪」という最適の標題を頂いた。
 終わりに、この組曲の出版にご尽力くださったメロス楽譜 西野一雄氏
に、心から御礼を申し上げる。
2013年5月