メロス楽譜 M2032 第1刷
鳥の歌
作曲者のことば
多田 武彦
 詩人・三好達治先生の生地は大阪市東区(現・中央区)南久宝寺町。
私の生地の南区(現・中央区)大宝寺町西之丁から北へ2キロ程の所。
そんなご縁を感じて私は学生時代から、何度か三好先生の詩にも作曲を
試みたが、果たすことはできなかった。
 三好先生の詩に漂う抒情は、時に濃厚に、時に可憐に変化する。しか
しその底流にば、常に三好先生ならではの人生観・宗教感が存在してい
た。この特質に無頓着なまま、音だけを追い掛けて作曲しようとしてい
た自分に気付き、私は1977年以後今日までに『海に寄せる歌』『わ
がふるき日のうた』『追憶の窓』『秋風裡』『百たびののち』『達治の
旅情』『花筐』の男声合唱組曲と混声合唱組曲『季節のたより』を作曲
した。
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 2013年「タダタケを歌う会」(メンバーの大部分が関東地方に在
住のかたがた)から新作の委嘱があった。三好達治先生の詩集を紐解く
と、随所に「海の詩・旅の詩・花の詩・春夏秋冬の詩・鳥の詩・濤聲の
詩」が散見され、今回は7篇の鳥の詩を選んだ。
 男声合唱を愛好されてきたメンバー各位の熟達した歌唱力と、永年に
亘り私の作品を手がけてきて頂いた高坂徹先生の卓抜した指導力によ
り、昨年名初演がおこなわれた。(因みに、この男声合唱組曲『鳥の
歌』と今年6月東西四大学合唱連盟合同ステージで初演される予定の男
声合唱組曲『達治と濤聲』を加えると、三好達治先生の詩による合唱組
曲は10作品となる)
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 終わりに、この作品の出版にご尽力くださったメロス楽譜西野一雄氏
に、厚く御礼を申し上げる。
2015年3月