PANAMUSICA メロスシリーズ PM3002 第1刷
燈台の光を見つつ
作曲者のことば
多田 武彦
 京都大学グリークラブOB会が50周年記念演奏会を迎えるに当って、永年
小生とは盟友の志水雅一氏(元、JT副社長)を通じて新曲の委嘱があり、「旧
制佐賀高校から京都帝大文学部卒業後、戦前・戦中を通じて大阪府立住吉中学
(現・住吉高校)教諭を勤めながら詩作を続けられた著名な詩人・伊東静雄先
生の詩による男声合唱組曲を作ってほしい」との意向が示された。
 志水氏自身も、伊東先生の住居に程近い大阪府立三国丘高校・京都大学経済
学部出身の仁であり、小生も大阪生まれの大阪育ちで、伊東先生の教え子の一
人であった庄野潤三先生(九州大学卒業後、大阪府立今宮中学教諭として着任
され、小生のクラスの担任として明るい性格と厳しい薫陶によって生徒達の評
判も頗る良く、後年『プールサイド小景』により芥川賞を獲得された先生)か
ら屢々伊東先生のことを聴かされていた。
 私は平成20年に、伊東先生の詩から六篇を選び男声合唱組曲「春のいそぎ」
を作曲し、好評を得ていたので迷うことなく男声合唱組曲「燈台の光を見つつ」
を作曲した。
 明治10年に完成された我が国最古の木造洋式燈台は昭和43年まで91年の
永きにわたり使用され、爾後現在も、大阪府堺市大浜北町の海浜に、伊東静雄
先生の詩碑と共に、我が国の史跡の一つとして残されている。
平成28年6月