音楽之友社 第8集
第八集の出版にあたって
 このたび,前七集に引き続き,音楽之友社のご好意により,男声
合唱組曲の三作品を,出版していただくことになりました。
 これらの三作品は,以前に,音楽之友社から出版していただいて
いましたが,現在事実上絶版状態にありました処,全国の合唱愛好
のかたがたから,「歌いたいが楽譜が見当たらない。再版は?」との
お問い合わせが多く,今回,再版の運びとなりました。
 組曲『蛙』は「立命館大学メンネル・コールが全日本合唱コンク
ールで第一位を獲得した時のメンバー」が,卒業に際し後輩に贈る
目的で委嘱されたもの。詩人,草野心平先生に会って,直々朗読し
て頂いた時のリズムや詩情を参考に,1968年に作曲しました。
 組曲『父のいる庭』は,小生の出身の京都大学男声合唱団からの
委嘱作品(『柳河風俗詩』・『富士山』・『藁科』に継いで四番目)
で,1961年の作。詩人,津村信夫先生の,ご尊父への暖かい想いや,
ご自身が父親となってからのお子様への愛情が,肌理細やかに綴ら
れています。第一曲目の詩にある兄上は,映画評論家として高名な
秀夫先生。
 組曲『北陸にて』は,上智大学グリークラブからの委嘱作品で,
1962年に作曲。詩人,田中冬二先生は銀行在勤中,北陸各地での勤
務が多く,その地の風物や人情の美しさを清らかに描かれています。
 こうした機会を与えて頂いたことについて,全国の合唱愛好のか
たがたに心から感謝するとともに,この出版にご尽力下さった音楽
之友社はじめご関係のみなさんに,厚く御礼を申し上げます。
平成15年2月5日 多田武彦