組曲「廟堂頌(びょうどうしょう)」
    長田恒雄 作詞

Ⅰ. 大屋根
ほのぐらき ひかりはよどみ
みあかしの かげも寂(しず)けく
くゆる香(か)の こころにふかし
群参(ぐんさん)の ひとのこえごえ
称名(しょうみょう)の 波立つこえごえ
そのこえは うねりよりつつ
のぼり立つ 柱のごとく
あわれかの 御影(ごえい)の堂の
大屋根を たかくささえて

Ⅱ. 小さき鳩
白砂に のどをならして
ほろほろと 小さき鳩よ
梵鐘(ぼんしょう)の ひびきころがる
輪をくぐり のどをならして
かげろうの ゆれる白洲(しらす)を
ささやきに 首かたむけて
ほろほろと 小きき鳩よ
大安慰(だいあんに) ここのみ寺の
念仏の 寄せるなぎさに
ほろほろと 小さき鳩よ

Ⅲ. 寂(しず)かに
御厨子(みずし)の 奥のくらがりに
あゝ 今日も 祖師(そし)はしずかに
白きおん珠致(じゅず) 音もなく
しみじみと 寂かに在(おわ)す
湧きあがる 称名の
しぶきの中に ただしずか
あゝ 今日も 祖師はしずかに
つねのごと
祖師はしずかに在します

この組曲は昭和27年,大谷大学男声合唱団の
ために作られたもので,仏教音楽の中でもと
くに芸術的な香気に溢れた作品である。三曲
とも関係調で作られていて「大屋根をさゝえ
て」と力強くf fで終わってから,「小さき鳩」
が「ほろほろ」とPで導入されてゆき,バス
によって表われる旋律がテノールの「ほろほ
ろ……」にまじわって浮き出されてくるあた
りは非常に印象的である。形式は三部分より
なりカノン形式で次第に広がってゆき二番は
終わる。「寂かに」は,信仰の内面的な感動
の世界が表現されている。「あゝ今日も祖師
は寂かに白きおん珠数音もなく」と淡々とし
た音の動きの中に深い信仰内容をおりこめ,
しづかに終わって行く。

●群事……大勢の事詣人
●御影の堂……親鸞聖人の御木像を御安置し
ている御堂
●大安慰……大きな心の安らぎ
●御厨子……御木像を御安置している宮殿(ぐうでん)
●廟堂……東西本顧寺のような寺院をさすも
 ので,念仏に生かされている人々の「心の
 ふるさと」である。